「筆ぺん」発売とオイルショック
1973年(昭和48年)「筆ぺん」の本格生産に入ろうとした同年の10月、第4次中東戦争に端を発したオイル・ ショックが到来しました。これによって、原油価格だけでなく石油関連商品の価格も暴騰し、国内市場は大混乱となり、そのあおりを受けて多くの工業用原料の入手が困難となりました。モノ不足が叫ばれ、スーパーマーケットの店頭からトイレットペーパーや洗剤、砂糖などが一斉に姿を消し、人びとが買いだめに走ったのもこの頃です。
オイル・ショックは日本経済を麻痺状態に陥れ、主に製造業に深刻な影響を与えました。当社の場合、直接的な影響は少なかったですが、原材料の調達には苦労しました。
ナイロン芯のみならず、胴の部分の素材など「くれ竹筆ぺん」のほとんどは石油を原料とする合成樹脂からできているためです。一時は生産の延期という事態も想定したほどでしたが、関係方面に手を尽くしなんとか原料を確保し、10万本を限定生産することができました。
テスト販売用にアレンジされた商品は、「くれ竹筆ペん」本体にインキボトル、使い方をわかりやすく記した 「くれ竹筆ぺん虎の巻」を1セットにしたものでした。使用法はぺん軸の尾栓を抜いてインキボトルにインキ含湿材(中綿)を差し込みます。すると、中綿が自動的にインキを吸い込むので、それを再び軸に差し込んで使うようになっていました。
1973年11月に実施したテスト販売は大阪の代理店10社に依頼しました。目前に迫っていた年賀状商戦をにらんだもので、年賀状がもっとも筆文字にふさわしいと考えたからです。
12月に入ると代理店の方から「これは売れる」「もっと商品を回せないのか」という声が殺到しました。