「筆ぺん」開発当時の社会背景~ドル・ショックがもたらしたもの~

1971年、アメリカのニクソン大統領は「金とドルの一時的交換停止」「10%の輸入課徴金の新設」など、ドル防衛のための非常措置を発表しました。
それまで、1ドル= 360円だったレートは12月のスミソニアン合意で1ドル= 308円へ、一気に16.88%も切り上げられました。円高は輸出価格を引き上げ、輸出取引に大きな不利を生み、当社はその直撃を受けることとなりました。

当時、サインペンをアメリ力へ輸出するための商談がまとまっていましたが、この急激な円高を受けて一斉にキャンセルされました。サインペンの海外輸出は製墨と並ぶ2本の柱のひとつであり、大きな影響を被ったのは言うまでもありません。
ドルショックに由来する為替の変動相場制の導入で、当社はサインペンの輸出そのものを断念し、一時的に貿易から撤退することとなりました。思えばこれが「筆ぺん」開発のはじまりだったのかもしれません。