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墨と彩墨で描く日本画の世界 ―丹羽優太さん、高資婷さん―

作品に生きる「呉竹の彩墨」

白石:
ありがとうございます。ちなみに、受賞した作品に呉竹の商品を使ってくださっているとのことなのですが、どの部分にどの商品を使ってくださっているのでしょうか。

丹羽:
僕はですね、メインとなる部分は持っていた墨を使いました。作品の中で黒い部分は全部同じ墨を使用しています。今回やった面白い点は、墨自体を紙にこすりつけて描いていることですね。

呉竹さんの商品は、火災のシーンに、刻字墨(こくじぼく)の赤と画墨深美(がぼくしんび)鮮光(せんこう)を使用しています。

あとは、津波のシーン。ちょっとわかりにくいんですけど、全体的に青っぽいんです。これは、画墨深美の美藍(びあい)を薄くしたものを全体に塗っています。基本的にはこの3つですね。

鯰の口元にも赤がありますが、これは本朱(※3)を使用しています。

白石:
使ってみて、色味や使い心地はいかがでしたか。

丹羽:
そうですね、津波のシーンは全体的に画墨深美の美藍を薄めたもので薄く青色をかけていると言いましたが、岩絵の具ではどうしてもこうはいかないんです。岩絵の具を使うとどうしても粒子感が出てしまいます。画墨を使うと、透明感があってみずみずしく感じます。メインに使っているものも、色をいれるのに使っているものも両方墨なので相性が良いです。

あとはやっぱり、顔料なので発色がめちゃくちゃ良い。

顔彩や水干(すいひ)※4)は粒子感はないんですが、色が沈んでしまうんですね。彩墨(※5)はそれがないです。

あとは、染料でなく顔料なので長年経っても色が抜けることはなく、すごく使いやすい。僕にとっては相性の良いものですね。

白石:
高さんはいかがですか。

高:

赤い服を着ている女の子は、刻字墨を使用しています。

最初は岩絵の具の朱色を塗っていたんですが、あまり赤くならなくて。この刻字墨を使ったら発色がいいし、ほしい色になりました。絹は両面描けるので、炎の一番赤いところは、裏から同じ赤を入れています。黄とかオレンジのところは、画墨深美の黄と刻字墨の赤を一緒に混ぜて、表裏両面からうすく何回も塗っています。

青い炎の下地には画墨深美の美藍を塗って、一番濃いところを浅葱と美藍で裏から塗っています。濃いというか暗いので、表を群青で明るくしています。背景のちょっと青っぽいところは藍墨をいれて、藍墨でグラデーションを作っています。

背景は中国の古墨を使っていて、骸骨のちょっと茶色っぽいところは油煙墨を使っています。

日本画の朱色はけっこう何度も塗らないと赤く発色しなかったのですが、刻字墨を使えばすぐ赤くなって、発色もいいので便利でした。

あと、絹本に描くので粗い絵の具をあまりのせずに、粒子が細かい絵の具しか使っていません。彩墨は絹本とすごく相性がいいです。裏打ちする時にもあまり落ちずちゃんと定着します。

白石:
今回、「彩墨 深美」が復刻という形で商品化、という運びになったのですが、商品化に際して期待するところなどをいただけますでしょうか。

丹羽:
やっぱり、呉竹さんの彩墨はとにかく発色が一番魅力的だなと僕は思っています。色を沈めることは簡単にできるんです。濁らせるなら、黒い墨をちょっと混ぜれば彩度はいくらでも下がっていくんですけど、彩度をあげることは僕ら使う側ではどうしてもできないので。

それをこれだけの細かい粒子で膠と練っている墨というもので、商品としてあるというのは、他にはないと思います。日本画の画材としては、これだけ粒子が細かくて発色が良いというのは、呉竹さんの刻字墨、深美の他にはなかなかないなという感じはしているので、復刻しての商品化というのは本当に嬉しいというか、よかったなと感じています。

高:
私も丹羽君と同じです。

あと、やっぱり絹本をやっていると、こういう彩墨なんかはすごく役に立つと思います。青い顔料と墨を混ぜたら、普通あまり発色がきれいにならない。けど藍墨をまぜたら、うすい青という感じで、背景を描いたらキレイなんです。

丹羽:
藍墨めちゃくちゃきれいです。

日本画の画材って、この前も和紙の原材料であるトロロアオイがなくなるというニュースがあったように、和紙にしろ金箔にしろ、なにがなくなるかわかりません。

そういう意味では、本当に数少ない「日本画の画材が増えた」、という話は嬉しい話だなと思います。

画材がないと、やっぱり僕らとしてはできることがどんどん限られてきてしまいます。画材があるとそこから想像が膨らんだりもしますし。

本朱(※3):

本朱は、絵画の材料となる朱色の天然顔料を指す。

水干(※4):

日本画で使用される、鉱石などを砕いて顔料とした岩絵具や水で土を精製した上で乾燥させ顔料とした画材を指す。使用する際に自分の手で固着剤となる、にかわやでんぷんを混ぜる必要がある。

彩墨 (※5):

刻字墨・画墨深美などの色のついた墨の事を指す。

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